お知らせ(2002)

T+1問題に関する報告書

2001年10月25日

この報告書は、東京外国為替市場委員会T+1小委員会が中心となって、米国株式市場における決済期間のT+1化問題に対する本邦での認識および対応の状況と、本邦外国為替市場への潜在的な影響について、2001年4月から2002年3月にかけて討議した結果を纏めたものである。なお、このT+1化は米国において、SIA(Securities Industry Association )を中心として検討されたが、SIAは本年7月に2005年迄にT+1化を図るという計画を一旦保留し、今後2年間は米国証券市場におけるSTP(straight-through processing)の推進に焦点を合わせ、2004年に米国株式市場決済期間のT+1への移行の可能性を再検討するという方針を打ち出した。

T+1問題に関する報告書

「米国株式市場における決済期間のT+1化による本邦外国為替市場における影響について。」

(前書き)

この報告書は、東京外国為替市場委員会T+1小委員会が中心となって、本邦におけるT+1化問題に対する認識および対応の状況と、本邦外国為替市場への潜在的な影響について、下記の項目を中心に検討したものである。又、今後関係者の取り組みがより積極化する事も予想されるが、状況の変化を注視しながら、関係諸機関との協力も含めて、採るべき対応について更に検討を加える予定である。なお、この報告書作成の過程で日本証券協会並びに投資信託協会と情報交換を行った。特に投資信託協会からはアンケート調査においても多大な協力を頂いた。この場を借りて、両協会に深く謝意を表明したい。

§ 本邦投資家の認識と対応状況(アンケート調査結果)
§ 円を運用基軸通貨とする運用者(又は運用外部委託先)、受託者(信託銀行)と外国為替取引銀行の関係
§ 上記三者間の「取引集中照合システム」の必要性。
§ 米国株取引決済がらみの円ドル為替取引
§ それから生じる円資金決済のT+1下の時間的制約
§ 外国為替ビジネスの流失の可能性

(要点)

(注)銀行・投資銀行・証券会社などの外国為替の取引相手を総称して呼ぶ事とする。

(目次)

  1. 背景
  2. 問題の所在
  3. T+1問題に関する本邦投資家の認識と対応状況
  4. 対米国株式投資の現状
  5. T+1後の運用者の選択肢
  6. 米国株式売買後の外国為替取引の問題点
  7. 東京外国為替市場に対する影響
  8. 日本の証券市場における決済期間のT+1
  9. 付表
1.背景
近年、先進主要国においては、金融取引の決済リスク削減が大きなテーマとなっているが、取引決済期間(約定から決済までの期間)の短縮は、DVPなどと共に、決済リスク削減のための代表的な方策の一つである(注1)。米国においては、すでに債券市場の中でも米国債や政府機関債については取引決済期間がT+1に短縮されているが、現在、株式取引についてもT+3からT+1へ短縮する計画が進んでいる。実施のタイミングは、2001年末現在では、2005年6月が予定されている(注2)。

(注1) 取引決済期間の短縮は、未決済残高の縮小を通じて債務不履行発生時の影響を抑制することを企図している。この点、決済時点での債権回収漏れリスク予防に焦点を当てるDVPとはやや観点が異なる。

(注2)2004年6月からの1年間、試験的にT+3とT+1を共存させ、1年後に完全移行する予定。なお、開始時期は、2001年9月の米国同時多発テロ事件の影響等から、当初予定比1年間延期されたもの。

米国株式については、本邦投資家も多額の投資を行っているが、多くの場合、購入代金用の米ドルを調達するためと売却代金米ドルの円転のための外国為替取引を伴っている。外国為替為替スポット取引の取引決済期間はT+2であるため、米国株式決済のT+1化は、外国為替為替取引にも大きな影響を与えることが予想される。

── 米国債及び米国政府機関債などの市場については既に決済期間はT+1化している。ただし、米国債などは東京時間においても取引が可能であること、店頭取引なので決済日も自由に設定可能であることから、これまで外国為替取引の決済面での問題が表面化しなかった。しかし、株式の場合は取引所取引が主流となるため、債券のような融通は利かず、外国為替問題が表面化する。

このため、東京外国為替市場委員会では、2001年4月、T+1小委員会を設置し、米国株式取引決済のT+1化移行が、本邦外国為替市場に与える影響について検討を開始した。

── 年初には、NY外国為替市場委員会より、米国証券業協会(SIA)が米国株式決済T+1化が外国為替取引に与える影響について検討する小委員会(以下、米国小委)を立上げ、同市場委も検討に参画する旨の連絡があり、東京外国為替市場委員会にも参加呼びかけがあった。これを踏まえ、T+1小委員会は、設立当初からNY市場委を通じて、米国小委と相互の検討状況について情報交換を行いながら作業を進めた(小委員会のメンバーについては付表1参照)。

── 又、当小委員会の検討対象は、飽く迄米国株式市場の決済期間がT+1化する事の本邦外国為替市場及びそこで行われる取引への影響である。従って外国為替スポット取引全体の決済期間の短縮化は今後検討されるべき重要なテーマであろうが、本稿では取り扱わない。

2.問題の所在

SIAでは、T+1化を単なる株式決済取引期間短縮の手段としてでなく、それに関わる取引と関係者全てを、高度な電子情報伝達手段を通じて有機的に結合し、取引を効率的に処理する、ネットワーク化された高度な事務処理システムを構築するチャンスとして捉えている。

── SIAでは、そうしたシステム構築のために必要な投資は、米国証券業界全体で80億ドルに達するが、事務効率化効果により、3年間で回収可能と試算。

一方、本邦サイドでは、本件に関する検討は米国対比かなりの程度遅れている。当小委員会が投資信託および投資顧問会社に対して実施したアンケート調査の結果によれば(詳細は付表5参照)、米国株式決済T+1化計画の存在自体の認知率こそ高いものの、対応策の検討は、個別企業レベルでも殆ど始まっていないことが示唆された。従って当然ながら、業界単位あるいは間連業界を横断的に巻き込んだシステム対応に向けた検討も、これからの課題と言えるであろう。

本報告書では、このような、我が国における米国株式T+1化問題に関する認識や対応に関する検討の現状を、アンケート調査結果に基づいて取り纏めるとともに、当小委員会における議論も踏まえて、今後の検討課題を提起する。

以下では、まず米国株式T+1問題に関する本邦投資家の認識および対応状況の現状についてアンケート調査結果を紹介した後、本邦投資家が対米証券投資を行う場合の決済および外国為替取引の実態について概観、次にT+1化後の米国株式売買に伴う外国為替取引における選択肢について考察し、最後にそうした外国為替取引の変化が本邦外国為替市場に与え得る影響についての問題提起を行っている。

3.T+1問題に関する本邦投資家の認識と対応状況

当小委員会は、2001年8月、本邦のファンドマネージャーの間で、米国株式T+1問題がどの程度認識され、また対応策が講じられているのかについてアンケート調査を実施した。

── 調査対象は、投資信託及び投資顧問協会加盟投資顧問会社の計79社。

残念ながら、回収率は3割弱と振るわなかったものの、寄せられた回答の内容は、示唆に富む興味深いものであった。

まず米国株式取引における決済期間がT+1短縮されることに関する認知度は、かなり高いことが示された。

しかし、既に何らかの対応策の検討を始めている先は、まだ極く一部に止まっており、当然ながらシステム対応についても、極く一部の先が検討を始めた所である。

こうした現状は、SIAが中心となって間連業界を取り纏め、間連業界全体として、新しい取引慣行に対応した新しい事務フローとシステムの特定化を、極めて具体的なレベルまで進めている米国に比べると、圧倒的に出遅れていると言わざるを得ない。もちろん、制度を変更する当事国に比べて対応が遅れることはやむを得ないとも言えるが、制度変更時点では同等の対応を求められる訳であり、事務体制、危機管理体制、などあらゆる面からの検討を早急に行い、キャッチアップすることが望まれる。

── もっとも、最近になって、機関投資家の一部にはT+1問題の検討に本格的に着手する先も見られ始めた。

4.対米株式投資の現状

財務省「主要国別対外株式投資の状況」(付表2参照)によれば、近年における我が国居住者による米国株式売買金額は、年間20兆円以上に及んでいる。

このうちどの程度が直接的な外国為替取引を伴っているかは不明ながら、かなりの金額の外国為替取引に繋がっていることは間違いないと思われる。

現在、本邦で円を運用基軸通貨とし、米国株式へ投資するファンド(特金・投信)を運用する運用会社(投資顧問における運用代理人と投信における委託者)は、外国為替の約定については、自己の裁量で外国為替取引銀行と直接行う場合と、運用会社が運用を一任する先(外部運用委託先)に運用会社の代わりに外国為替取引銀行と行わせる場合がある。いずれの場合においても、取引の確認及び決済は信託銀行が行う。この様に、米国株式の購入又は売却に伴う外国為替取引には、運用者(又は外部運用委託先)、信託銀行そして外国為替取引銀行の三者が関わってくる。

本邦機関投資家による米国株式投資に関する外国為替取引の資金決済に至るまでの流れを見ると(フローチャートは付表3参照)、基本的には、以下の3タイプに分類される。

(1)国内の運用会社が米国株式取引後、在日外国為替取引銀行と外国為替取引を行う。
(2)在米外部運用委託先が米国株式取引後、自ら在米外国為替取引銀行と外国為替取引を行う。
(3)在米外部運用委託先が米国株式取引後、国内運用会社が在日外国 為替取引銀行と外国為替取引を行う。

── (2)の場合、在米外国為替取引銀行は通常その日本支店を使って、信託銀行との間で行われるバックオフィス関連事務を処理する(所謂back-to-back処理)が(付表3(2)-(A))、日本に支店が存在しない場合には、自ら信託銀行との間で取引の確認・記帳等を行う一方、日本のコルレス銀行に円の受払い事務を委託する事になる(同(2)―(B))。

上記の通り、現在でも米国株式売買に伴う外国為替取引を米国市場で行うケースがあるうえ、国内市場で外国為替取引が行われる(1))と(3)のケースでは、何れも株式取引日の翌日(T+1に当たる日)に外国為替取引が行われている。

米株取引決済のT+1化が実施された場合、上述のようにT+3体制の下では国内で実施されてきた外国為替取引が、どのような形で行われることになるのかは、東京外為市場にとって重要な問題である。 次のセクションでは、前述のアンケート調査結果も踏まえては、この点について検討する。

5.T+1後の運用者の選択肢

このセクションでは、米国株式取引の決済がT+1に移行した場合に、米国株式取引に伴う外国為替取引について、どのような選択肢があるか、および各選択肢の得失、feasibilityを検討する。

米国株式を取引する場合、取引に必要な米ドルの調達については、(1)予め調達して米国の口座に滞留させておく方式(外貨滞留型)と、(2)取引の都度購入する方式(非外貨滞留型)が考えられる。また、非外貨滞留型の場合、理論上は行われる時間帯によってさらに以下の3つの手法に分けられる。

     a) 米国T+1
     b) 東京T+0
     c) 米国T+0

(1)外貨滞留型(証券取引と外国為替取引を切り離して行う)

外国為替取引は株式取引と切り離して行い、米国カストディ口座に米国株式購入用にドルを予めファンディングし滞留させる一方、米国株式売却代金のドルを滞留させ運用する方式。

── 資金の効率運用という観点からは、殆どの米国カストディは滞留資金に付利サービスを行っており大きな問題にはならないと思われる。

この方式については、三者間の事務処理で新たな時間的制約が加わる事がなく、これまで通りの外国為替取引で決済上の問題は生じない。ただし、本方式が主流となるか否かは、本邦投資家の資産運用スタイルが変化し得るか否かに依存する。

── 2001年からそれまでの受渡簿価会計から約定時価会計に年金会計が改め られたが、多くの委託者(最終顧客)は、未だ円を基軸通貨とする会計処理、あるいは外貨余資資産を想定しない資産種類毎の運用実績評価へのニーズを持っており、外貨余資滞留型の運用スタイルを敬遠する傾向が強い。また、投信においては想定外の元本解約への対応の必要性から、一定の余裕資金を外貨ではなく円で運用するニーズが高い。

(2)非外貨滞留型(証券取引毎に外国為替取引を行う)

この場合、上に述べた様に理論的に3つの選択肢、a)米国市場におけるT+1取引、b)翌日の東京市場におけるT+0取引、c)米国市場終了後日本市場開始前の米国T+0取引、の取引が存在する(注)。

(注) 米国株式の約定の際に決済サイクルをT+1より長めに契約することにより、東京T+1以降のタイミングでの取引を可能とするとの案も聞かれるが、こうした方式は、当該証券会社からの信託財産に対する貸出し行為と見される可能性があるほか、そもそもT+1化の本来の目的と相反するものであり、極めて特殊なケースを除けば、実際の選択肢とはなり得ないと思われる。

これら選択肢のfeasibilityを比較すると、以下の通り、東京市場での外国為替取引(b)には相対的に解決すべき問題が多く、海外の外貨滞留型口座への資金プールという形が採られない場合でも、米国株購入又は売却に伴うの外国為替取引は、米国にシフトする可能性がある。

  • まず東京T+0の場合、米国T+1に比べ外国為替取引後の時間的余裕が圧倒的に少なくなるため、これに伴う三者間のオペレーショナル・リスクが高くなる可能性がある。
  • また、ドル建て購入又は売却金額を東京市場の外国為替取引委託先(または注文主本人)に連絡するという手順が加わるため、連絡漏れや金額相違といったオペレーショナル・リスクが発生する。 米国T+0の場合も、株式売買と外国為替取引が別主体によって担われるのであれば、東京T+0と同様のリスクが発生する。
  • 米国株式売買代金に関する外国為替取引は、早くとも所要金額が確定するニューヨーク株式市場終了後(現地時間16時)に行われる事が多いと予想さる。外国為替市場における流動性の観点から見ると、ニューヨーク市場の夕方(T+1,T+0とも)の流動性と東京市場早朝(時間制限を考えるとそうなる可能性が大)のT+0の取引の流動性を比較する事になるが、現時点では、双方とも流動性にやや問題があると見られている。T+1化後の将来に、どちらの流動性が高くなるか予測するのは難しいが、両市場における外国為替取引銀行等の取組姿勢が、重要な決定要因になると思われる。
  • 外国人との取引に投資家が難色を示すことも予想されるが、この点は比較的容易に需要に見合う供給(外資企業による日本人アドバイザーや窓口要員の雇用)が実現されそうに思われる。

○ 米国市場で株式取引に伴う外国為替取引が行われる場合のうちなお、米国T+0については、株式購入が非常に遅い時間に行われた場合など、特殊事例に限られることが予想される( 実際、当小委員会が投信業者に対して実施したアンケート調査に依れば、外国為替取引を株式取引の後に行う可能性が高いとした先のうち、翌日の米国市場におけるT+0取引を示唆した先は、極少数であった)。したがって、米国市場で株式取引に伴う外国為替取引を行う場合には、米国T+1となる可能性が高い(注)。

(注)米国T+1の場合、理論上は、誰が実際の為替取引を行うかにより、3通りの方式が考え得る(詳細は付表4参照)。

6.米国株式売買後の外国為替取引の問題点

○ 米国T+1であれ、東京T+0であれ、米国株式売買後に必要な外国為替取引を行う場合、 次の三点を留意しておく必要がある。

(1)国株式市場終了時(米国T+0,16:00EST)から円資金の送金期限(日本T+1、12:00JST)までの6~7時間という極めて限られた時間内での処理が必要となる。

── 証券の売買の決済金額が確定してから、外国為替の発注を行うこととなり、証券の取引内容の確認から決済指図、および外国為替の発注、資金決済指図までの一連の作業を上述の6~7時間内に完了する必要がある。

(2)述の時間帯に外国為替市場に相応な流動性が存在することが大前提となるが、これら短時間内に一連の処理を正確に行うためには、証券取引のT+1対応のために構築が進むGSTPAのTFMや、OmgeoによるCTMと同様、外国為替業務領域においても、投信投資顧問会社(運用者)、外国為替取引銀行、信託銀行(受託者)の3業態間による「取引集中照合システム」などによるSTPフローの構築が必須となると思われるが、現在未検討の状況である。

(3)本邦の特金、投信において、円の余裕資金については東京のコールローン市場で運用しており、概ね午前中には大部分の取り引きが完了している状況である。したがって、朝9時の段階でコールローン市場への運用金額が確定しないと、未運用あるいは不利な条件での余資運用となる可能性が高い。朝9時迄の運用金額の確定のために、当事者(運用者、受託者、外国為替取引銀行)はかなりの早朝勤務を強いられる可能性が高い。

7.東京外国為替市場に対する影響
(外国為替ビジネス海外流出問題)

上述の通り、米国株式取引の決済日がT+1となった場合、本邦投資家によるドル調達および処分に関しての外国為替取引は、事前であれ事後であれ、海外に流出する可能性がある。加えて、そうした米国株式売買に絡んだ外国為替取引における海外シフトは、取引関係の変化を通じてそれ以外の外国為替取引も併せて海外へ流出させることに繋がりかねない。

さらに、こうした動きの結果として、東京市場の取引高や流動性が低下すると、近年、外国銀行や投信投資顧問業界において観察される運用拠点の統廃合の動きにも影響を与え、これら企業の更なる海外流出に繋がるリスクも無しとしない。

こうした動きは、経営効率化の結果であり、必ずしも問題視すべきことではないが、東京外国為替市場の活性化という観点からは、何らかの対策を検討しておくことが必要と思われる。

やや具体的には、米国株式の決済期日がT+1になった場合、東京市場で外国為替取引を円滑に実行するために必要な機械化や情報伝達体制について、自社内に止まらず、関係企業を巻き込んだ検討を早急に開始する必要があろう。又、問題の所在と対応策についての説明を、顧客に対して出来るだけ早期に実施する事も、投資家の東京市場離れを予防するために必要な措置を思われる。最後に、本問題は影響を受ける関係者が広範に亘り、また取引の市場慣行にも大きな影響を与えると考えられるため、個々の企業毎の努力もさる事ながら、業界単位及び業界の枠を超えた取組みが必要と考えられる。

8.日本の証券市場におけるT+1化について

なお、本邦証券業界における決済期間短縮化に向けた動きを窺うと、本邦においても現在、債券及び株式取引の決済期間T+1化に向けた検討が、日本証券業協会等を中心に進められている。本稿では、米国株式取引の決済T+1化問題のみ取り上げたが、今後、システム対応を含めたより具体的な対応を検討するに当たっては、本邦における証券決済T+1化の影響も併せて検討していくことが必要と思われる。

当小委員会としては、海外市場委員会に加え、国内関係者とも密接な意見・情報交換を行い、更なる検討を進めていくこととしたい。

9.付表

付表1

東京外国為替市場委員会

T+1小委員会
小委員長 小林和成   (ステート・ストリート銀行)
     北島 博   (同上)
     鈴木 正泰  (野村証券)
     玉置 圭子  (ゴールドマン・サックスAM)
     西川 広親  (日本銀行)
     牧野 賢一  (三菱信託銀行)

付表2

対米国株式投資の状況―決済ベース(財務省データ)

対米国株式投資の状況  (財務省)

(単位:億円)
米国
取得 処分 ネット
1999(平成11)年 108,506 93,884 14,622
2000(平成12)年 126,345 115,007 11,339
2001年(平成13) 1月 8,194 8,778< △ 584
2月 7,377 8,069 △ 692
3月 8,071 7,742 329
4月 10,207 7,840 2,36
5月 9,281 6,968 2,313
6月 10,164 8,245 1,920
7月 9,366 6,115 3,251
8月 8,023 7,061 962
9月 6,869 6,789 79
10月 12,087 8,751 3,336
11月 7,029 6,870 159
12月 11,166 9,608 1,558
小計 96,668 83,228 13,440

付表3

米国株式売買に伴う外国為替取引のフローチャート













付表4

米国T+1後の米国株式売買に伴う外国為替の3つの選択肢

(1) 米国株式の運用について、その約定と関わる為替の運用および約定についても、外部運用委託先と運用再委任の契約を結び、為替取引を米国の運用者に一任する場合。

  • メリットとして、最良執行が期待でき、東京の早朝に比べれば流動性がある程度期待できるニューヨーク市場の午後の遅い時間帯に取引が行える事と、当事者間の当該外国為替取引に関する情報のやり取りにもより長い時間が使える事がある。しかし、円滑な取引事後確認と円決済のため、外国為替取引銀行の選定は日本側の運用者や受託銀行によって特定される可能性が高い。又,ヘッジ取引についても外部委託すべきかの議論が運用者内部で必要である

(2)運用会社から受託銀行に対して、外国為替発注業務について包括指図する事により、受託銀行が外国為替取引銀行として自動的に外国為替取引を行う場合。

  • 当該為替取引に関し受託銀行が外国為替取引銀行の役目も引き受ける事によって短時間内で行われなければならない情報のやり取りと資金決済の流れが簡略化されるメリットがある。

しかし、信託銀行の外国為替部門が米国にあり(もしくは日本時間の夜間勤務により)、米国の時間帯において信託財産に米国株式の異動が反映され、結果の米ドルの資金繰りが計算され、当該外国為替部門に必要な送金ドルの指示がいくようなシステムおよびインフラを構築する必要性が生じる。又、運用会社が外国為替取引を受託行へ一任できるかに関する法解釈が問題になる可能性もある。例えば、受託銀行とサブ・カストデイアン(保管銀行)が別の銀行である場合、このシステム及びインフラの構築は非常に難しくなってくる。又、当然この場合最善執行は期待できず、信託銀行の保管財産とその信託銀行の外国為替部門の間に利益相反の問題が出てくるので、適正な条件で取引が成立する様な仕組みが必要となってくる。

(3)受託銀行が、運用会社の包括指図に基づき、米ドル資産のサブ・カストデイアンに対して外国為替取引発注業務を委託する事により、サブ・カストデイアンが外国為替取引を行う場合。

  • 現スキームでは、運用会社とサブ・カストデイアンには契約関係がないので、一義的には受託銀行に対して外国為替取引の発注業務を委託し、さらに、受託銀行からサブ・カストデイアンの外国為替部門への再委託を行うことになるのではないかと考えられる。
  • 上記 (2)との決定的相違は、受託銀行は日本円も外貨も管理しているが、サブ・カストデイアンは外貨資産管理に限定されているので、日本円の資金繰りは把握できないことにある。 解決法としては、サブ・カストデイアンに非居住者円として、円の一部もしくは全部を保管させる、もしくは、受託銀行の日本円の資金繰りをサブ・カストデイアンに開示する仕組みを作ることが考えられる。
  • 後者の場合、サブ・カストデイアンが受託銀行の円を間違えて異動させた場合に、後刻日本時間で対処・解決できないという信託財産管理上の問題が発生することから、サブ・カストデイアンと受託銀行との契約の整理が重要になる。
  • 当該外国為替取引に関するメリット、デメリットは(2)の場合とほぼ同等であると考えられる。

付表5

アンケート調査の結果

為替アンケート結果

これまで述べて来た様に、東京外国為替市場委員会のT+1小委員会では、世界的な流れである証券決済のT+1化、とりわけ影響の大きいと考えられる、米国株式決済のT+1化が外国為替市場における影響について、議論を行ってきている。

そのような中、実際の運用者である投資信託会社、投資顧問会社などが、T+1化をどのように捉え、対応策を検討しているかなどについて、できるだけ詳細な情報を得ることが、外国為替市場に与える影響度もより詳しく分析できるとの観点から、投資信託及び投資顧問協会加盟の79社に対してアンケートを実施した。

有効回答数は、22社、回収率は27.8%となった。なお、回答を頂いた22社のうち、2社は現在米国株式の取引がないとのことである。

最後に、このアンケートを実施するに当たって、投信信託協会とその会員各社から多大な協力を受けたことに対し謝意を述べたい。

以下は、アンケートの質問とその回答を集計したものである。尚、各設問ごとの比率は、その設問に対する総回答数から算出したものである。

  1. 米国の株式市場における決済期間変更(T+3→T+1)計画について認識している。

    はい 95%(19社)          いいえ 5%(1社)

  2. 米国株式の決済期間短縮化に対する対応について、検討をはじめている。

    はい 20%(4社)          いいえ 80%(16社)

  3. 米国株式の売買に付随する外国為替取引に及ぼす影響に対する対応も考えている。

    はい 30%(6社)          いいえ 70%(14社)

  4. T+1化以降の外国為替取引に関しては次に挙げられているもので対応する可能性が高い。

    ア)外貨滞留型の口座で、証券の購入には前もって外貨の準備をし、売却後は外国為替の決算日まで一日以上の外貨の運用をする。
    66%(10社)

    イ)海外にいるインベストメント・アドバイザー(運用外部委託先)に委託、ないし一任し証券の取引成立後、必要な外国為替取引をT+1ベースで行わせる。
    26%(4社)

    ウ)米国株式の決済日(T+1)の日に、当日決済(T+0)の外国為替取引を行う。
    6%(1社)

    エ)第三者(カストディアン、信託銀行など)に自動外国為替取引の依頼をして、当日決済(T+0)の取引を行う。
    40%(6社)

    オ)その他(差し支えなければ具体的な記述をお願いします。)
    26%(4社)

    主な内容
    • 決済期間変更そのものの計画を熟知していない、あるいは計画は知っているものの問題点を確認中なので、現在のところ対応は未定。
    • カストディアン、ブローカーといったところの対応が具体化していないので、運用者としても対応の検討が出来ない。
    • 決済期間をT+3から変更せずに対応する、海外ダイレクト決済ではなく、国内店頭取引を利用して受渡期間を確保するといった、そもそもの約定時点で別の対応を取る。
  5. 4.の選択の理由等(頂いた意見を集約したもの)

    ア)について

    • 時間的な余裕が持てるため。
    • ファンドによっては、現在と同じ取引スキームで対応可能であり、社内システムなどの変更も不要。
    • 投信ファンドに対しては、既に外貨滞留型口座を通じての取引が始まっているが、年金特金ファンドの場合は、顧客属性又は顧客の要望によって、この様な対応が取れない場合もありうる。

    イ)について

    • 時差面で不利な状況を解決できる。
    • 証券約定とそれに付随する外国為替取引といった関係を考えるに、最も適当かつ確実な方法。

    ウ)について

    • スムーズな連絡方法があるかは疑問な部分もあるが、この形での対応は否定できない。

    エ)について

    • 受託している信託銀行にて為替を取るケースが多いので、社内システムの変更なしで実行できるなど、現実的。
    • 時間的な余裕ができるため。
    • あくまでも最終的な為替の取得や円貨金額の確定は、投資顧問・投信委託会社が行うべき。最終的な金額の調整をする取引としては最適である。

  6. T+1への移行に際し、外国為替取引に関して証券会社、信託銀行や都市銀行に望むこと。
    • 外国為替取引において、当日受渡を可能にすること。
    • 翌日受渡し(あるいは当日受渡)の取引レートをクォートすること。
    • 証券会社、運用機関、受託銀行、為替取引きの相手となる機関間での、ストレートで継ぎ目のない情報伝達や確認システムの設置、すなわち全体的なSTP化。国内だけでなく、Globalな取引を視野に入れて考えることが必要。
    • 各社の事務体制やシステムの確立整備。
    • 外貨滞留型取引への対応など、信託銀行によるGlobalな対応が必要(Globalカストディ的役割を担うことが必要)。
  7. T+1化へのシステム開発等の自社内での進捗状況

    ア)システム対応完了         0%
    イ)システム構築中          0%
    ウ)システム構築などについて討議中  27%(6社)
    エ)未着手              73%(10社)

  8. T+1化への移行に際して予想されている問題、不安事項など
    • 海外のインベストメントアドバイザーを利用して取引した際の、連絡ミスなどによるフェイルの発生、時差をカバーするための連絡体制など、アドバイザーを利用した際の事務のフィージビリティ。
    • 日本における外国証券運用業務の空洞化。
    • T+1化と投信解約受渡日までの時限の関係。
    • 信託銀行ごとの対応方法や進捗状況の違い。
    • システムに頼る部分が今以上に多くなると考えられるが、トラブル時のコンティンジェンシープランなど、危機管理体制の充実が必要。
    • T+1取引への移行に伴う、フェイルの発生、資金繰りトラブルの増加など、市場の安定性に対する不安がある。
    • 約定主義、受渡主義といった会計制度が混在する場合がまだある。
    • システムの構築とその費用負担。

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『CLS導入にあたっての諸考察』

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東京外国為替市場委員会では、CLS(Continuous Linked Settlement)決済の導入に関して様々な検討を重ねてきた。ご高承のとおり、CLSは外国為替市場に内在する時差のリスクを解消する手段の一つとして期待され、アジアに位置する東京市場としてそのメリットは大変大きいものと思われる。そこでCLS決済導入が外国為替取引にどのようなインパクトを与え得るのか、また、市場参加者としてどういった点に留意しなければならないのか、という視点から議論を進めてきた。この『CLS導入にあたっての諸考察』(以下、本レポート)は、上記の点に関し市場参加者を啓蒙し、認識を深めて頂くことにより、市場取引の円滑な遂行及び無用なトラブル防止の一助となることを目的に、下記の項目を中心に作成され公表するものである。

  1. CLS導入に関するフロントオフィスの留意点
  2. CLS導入に伴う二重価格の可能性
  3. 取引額の制限
  4. アンセトル発生時の対応
  5. 流動性管理

尚、本レポートは、東京外国為替市場委員会CLS小委員会が中心となって作成したものであるが、東京外国為替市場参加金融機関のフロントオフィス、バックオフィス、決済担当部署、更に仲介業者やCLS東京ユーザーグループ等の意見を聴取し、討議した内容をも反映させたものである。討議にご参加頂き、本レポート作成にご協力下さった方々に改めて謝意を表したい。

言うまでも無く、CLS決済及びそれを利用した外国為替取引に関する市場慣行は、CLS稼動後にCLS決済参加金融機関間で世界的規模で徐々に醸成されていくものである。したがって、本レポートにおいては、CLS稼動前の現段階で入手可能な情報に基づいて想定し得る範囲内で、留意点を指摘するに止めている。CLS決済の稼動後に生じるであろう種々の問題や事象については、今後必要に応じ留意点等をアップデートしてまいりたいと考えている。

尚、本レポートの内容に関する照会の窓口として、東京外国為替市場委員会のCLS小委員会の委員をレポート末尾に列記した。また、CLSに関する一般的な照会の窓口として、CLS東京事務所及びCLS東京ユーザーズクループの連絡先も併記した。

2002年9月6日
東京外国為替市場委員会
議長  荻野 哲司
CLS小委員会委員長 市川 亨

<CLS導入にあたっての諸考察>

1.CLS導入に関するフロントオフィスの留意点
(1)原則となる決済方式の想定に関する留意点

CLSは決済リスク軽減を目的としたシステムであるが、多くの銀行がCLS決済利用取引についてはセトルメントリスクをゼロとみなすことを予定している。CLSの円滑な運行が確認されれば、こうしたメリットを享受するため、CLS適格取引(※)は、特段の事由がなければ原則CLS決済となることが想定される。

(※CLS適格取引:CLS参加行間で行うCLS対象通貨の取引)

(2)インターバンク・ダイレクト(D・D)取引における留意点
  1. CLS決済を導入すると、CLS決済とそれ以外の決済(非CLS決済)について、それぞれの金繰りを調整する必要が生じる。こうした調整は、特にフォワードマーケットでのT/N取引等で行なわれる事が多いと思われるが、多数行われるこの種の取引の中にはCLS決済・非CLS決済が混在し、各銀行は資金尻を調整する上で、事前にCLS決済かどうかを確認し、取引を選別する必要が生じる。
  2. 資金尻調整上、CLS適格取引にもかかわらず非CLS決済を選択する場合も考えられるが、こうした場合には事前に希望する決済方式を明示し、相手の了承を得る必要が出てくる。
  3. いずれにしろ個別取引の際、相手方から予定している決済方式について聞かれたら必ず回答する、あるいは必要があれば自発的に事前に明示する事が望ましい。

<外為市場委員会からの提言>

・CLS参加行は、CLS決済開始までに取引金融機関にその通知をし、その後 ダイレクト取引に於いて、CLS適格取引にもかかわらずCLS決済としない場合は、個別取引の約定前に相手方にその旨明示する事が望ましい。
(尚、本件については、code of conductに同様の文言を載せる事も検討中である。)

(1)電子ブローキング利用における留意点

CLS導入に際し、電子ブローキング各社では決済口座の指定に関するシステム対応(※)を行う予定である。但し、電子ブローキング利用先は、CLS開始に先立ち決済情報について一定の指定作業を行う必要がある。作業内容は電子ブローキング各社毎に異なるが、作業量が多くなる場合もありうる。したがって、円滑な移行を実現するため、予め必要な作業を認識し、十分な準備をしておくことが望まれる。

(※システム対応:各利用先が、自社と取引先の決済情報を事前にシステム登録し、取引先および取引通貨毎にどの決済方式を利用するかを予め指定しておくことによって、個々の取引に際して都度決済方式を指定することを回避することが可能となるもの。)

<外為市場委員会からの提言>

CLS導入に際し、参加行は電子ブローキングシステムの決済情報を事前に更改する必要があるが、決済処理における不測のトラブルを避けるために、十分な事前準備と堅確な対応が求められる。

(1)ボイスブローカー経由取引における留意点

市場参加者間ではボイスブローカーの方がより対応に融通性があるとの見方も多い事から、DD市場以上にCLS適格取引であるにも拘らず、非CLS決済とすることが行なわれやすいものと予想される。その場合、①事前に決済情報を提供してからプライシングするのかどうか、②決済方法の別による取引成約条件の違い(クレジットラインの額、場合によっては価格)、③取引条件の複雑化に伴うスタッフィング増加といった問題が出てくる可能性がある。

<外為市場委員会からの提言>

・CLS導入に際し、ボイスブローカー経由の取引に於いてもCLS取引と非CLS取引が混在した場合、取引内容確認事務や、場合によっては取引自体の成立に支障が生じる可能性がある。また、CLS決済・非CLS決済の別により取引条件に差が生じる可能性もあるため、ディーラーはブローカー取引の利用方法について、ブローカーは事務対応についてそれぞれあらかじめ十分に検討した上で、相互に認識のすりあわせをしておく必要がある。

2.CLS導入に伴う二重価格の可能性

(1)ブローカー経由取引については、決済方法により異なるプライスを呈示出来るようなシステムを構築する等の対応をする予定はないため、2つの異なる価格が並んで呈示されるような、明示的な二重価格が発生することはない。

(2)また、電子ブローカー、ボイス・ブローカーとも、決済方法別のマッチング・サービスを行う予定も無い。したがって、ディーラーは、ブローカーを利用する限りにおいて、決済方法の違いによって、一度成約した内容を事後的にキャンセルする事はできない。このためCLS参加行が非CLS取引を回避したい場合は、例えばCLS非参加行のクレジットラインをゼロに設定するといったことになる。

(3)CLS参加行が、非CLS取引をどの程度忌避するかは、現時点では不透明。現状対比でリスクが高まる訳ではないので、強く忌避する(クレジットラインを削減する)ことに疑問を呈する向きも根強い一方、クレジットポリシーの変化や、実務上の要請(決済口座の一元化による事務効率化、クレジット管理事務の削減等)により、取引相手の中から、CLS非参加行が排除される可能性は否定できない。

(4) この結果、CLS非参加行はベスト・プライスへのアクセスが制限されて、決済リスクプレミアムの乗った不利なプライスで取引せざるを得なくなる事で、実態的に二重価格が発生する可能性がある。こうした二重価格の可能性は、CLS取引と非CLS取引が併存する間は存在しうる。

<外為市場委員会の見解>

CLS参加行と非参加行間で価格差が発生する可能性が指摘されているが、東京市場においてはCLSに関するブローカー等の対応状況を勘案すると明示的な意味での二重価格が発生する事態は想定しづらい。ただし実態としてCLS、非CLS取引間で価格差が発生する可能性は否定出来ない。尚、価格差ではなくクレジットラインを削減するといった対応が市場の大勢となった場合、実質的な市場の分断が発生し、結果的に市場の流動性低下に繋がる可能性もあり注意を要しよう。

3.取引額の制限

(1)CLSでは、USD100mio超の大口取引は自動的に細分化され一取引あたりの額を小さくする仕組みになっている。

(2)この為フロント業務に関しては取引の小口化或いは細分化といった何らかの制限が課せられる可能性はあるものの以下の理由でその可能性は小さいと考えられる。

①現状ではFWD取引を除くとUSD100mio超の取引は稀。
②CLSは件数ベースの手数料体系となっている為、必要以上の取引の細分化はコスト増を招来。
③大口取引の自動細分化というCLSの仕組みが存在。

<外為市場委員会の提言>

CLS取引において、一取引を複数に細分化する要請が起こる可能性は小さく、このため大口取引の取り扱いでディーラーに制限が加わる可能性も小さい。もっとも各金融機関固有のセトルメントリスクに対する考え方の差で、場合によっては取引相手先から取引の細分化等の要請が起こり得ることを認識しておく必要がある。

4.アンセトル発生時の対応

アンセトルが発生した場合、特に円関連取引については時間的な制約を受ける可能性が高いと思われることから、各金融機関は正確かつ迅速にそれぞれの資金繰り業務を行うことが望まれる。なお、アンセトル発生時の対応としての東京市場17時以降のマーケット活性化(O/Nスワップの取引時間延長等)も考えられる。この点については、必要性のチェックやだれが主導するかも含めて今後の検討課題であり、広範な市場関係者間での話し合いが必要と思われる。

<外為市場委員会の見解>

CLS導入後17時以降の日銀決済延長時間帯の取引活性化は、今後の検討課題であり、マーケット関係者による話し合いが必要と考える。

5.流動性管理

(1)メンバーのCLS口座は個別通貨毎に一定の限度内でマイナス残高が許容されているが全通貨合算の残高はプラスとする事が決済の条件となる。従って決済の為にはNOSTRO先による日中O/D枠の供与、CLSと非CLSの資金偏在に関する調整(インサイド-アウトサイドスワップの実施)といった日中流動性の確保が課題となる。

(2)また1口座を複数の拠点で共有するようなケースでは資金の偏在が発生しうる為その資金管理には十分留意する必要があると思われる。

(3)しかしCLS導入に伴うこれらの諸問題への対応は資金管理状況等に応じて各行が個別に対応すべき性格のものと考えられる。

<外為市場委員会の見解>

CLS決済の為には日中流動性の確保が課題となる。各金融機関は関係部署間で緊密に連絡を取り合い、その連携を図って流動性管理について対応することが望ましい。

6.小委員会で提示されたその他検討事項
詳細が不明な為十分な議論が出来なかったが、以下の項目に関し今後検討する必要があると思われる。
  1. 取引約定後2時間以内のコンファーメーション送付の実現性
  2. CLSシステムのコンティンジェンシープラン
  3. インサイド-アウトサイドスワップ実施時におけるクレジットの問題

    CLS銀行は取引可能性のある先について情報提供はするもののクレジットの問題によりスワップを利用出来ない可能性は残るためCLS-非CLS間の資金偏在を調整出来ないケースもある事に留意する必要あり。

  4. セトルメントメンバー間でカウンターパーティーを排除出来るオプション

    特定のセトルメントメンバーが格付け低下等によりCLSセトルメントメンバーとしての資格を停止される前であっても、各セトルメントメンバーはユーザーメンバーやサードパーティーの取引について当該取引の決済相手となる特定のセトルメントメンバーの信用低下を理由に決済を拒否する事が出来るオプションを保有する。ユーザーメンバーやサードパーティーは、こうしたリスクを認識しておく必要がある。

以上

本レポートについてご意見・ご質問があれば、下記の何れかにEメールにてご照会下さい。

氏名所属メールアドレス
東京外国為替市場委員会 CLS小委員会
石川 栄一(イービーエスディーリングリソーシスジャパン)eishikawa@ebsdr.com
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居村 元(東京三菱銀行motoshi_imura@btm.co.jp
宗川 雄視(ロイター ジャパンyuji.sokawa@reuters.com
竹中 浩一(みずほコーポレート銀行)koichi.takenaka@mizuho-cb.co.jp
梨本 忠彦(バークレーズ銀行tadahiko.nashimoto@barcap.com
花生 浩介(ロイヤル バンク オブ スコットランド)kosuke.hanao@rbos.com
CLS 東京事務所
土屋 潔 ktsuchiya@cls-group.com
CLS 東京ユーザーグループ
石田 久也(三井住友銀行)Ishida_Hisaya@ra.smbc.co.jp
麦田 勇明(東京三菱銀行)yumei_mugita@btm.co.jp